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「おぬしは、それがしが死ぬと悲しむ者がいることを教えてくれた。されど、そなたは自身のことを勘定にいれておらぬふしがある」
 自身のことを勘定にいれていない、とわが不思議そうにこちらの言葉をくり返す。
「妹を、あきを必死になって助けてくれたことには感謝している。だが、むちゃをしたことは感心できぬ」
「そんなことをいっても、あのときはああしなければ」
「お父上が、与助殿が悲しまれる。おとわが命を失えば」
 こちらの言葉にとわが目を見開いた。
 人は、近くに“ある”もののことはつい忘れてしまう。
 己自身という至近か、近しい者を通り越した場所についつい目が向いてしまうものだ。
「生きることを“投げて”はならぬのだ、たとえそこが死地だとしても」
 おそらく、そこにかつての父と、先ほどの戦いで力を出し切れなかった自分の差があるのだろう。
 中途半端では駄目なのだ。
 たとえば、死を恐れぬというなら失うものがなにひとつない状態になれば迷うことがないから死線の間際に立っても心が揺れることはない。
 だが、それは宗左衛門には無理なのだ。
 あき、という双子の妹を大事に思い、さらにはとわという親しい人間もできた。
 なれば、迷うことなく“守りたい”“守れる”と信じねば戦いのなかで躊躇が出てしまう。何事もつらぬくこと、極めることこそが強さの秘密。
 宗左衛門は冷静になって、かつての父と己、清峰忍群の頭と自分の違いなどから悟った。
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