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「面をあげよ。かような刻限に身共を起こすからには一大事が出来したのであろう」
深更に叩き起こされたというのに叉一郎は快活な口調で告げた。
「実は」
宗左衛門は顔をあげてここにいたるまでの経緯を手短に説明する。
「ふむ、なるほど。それで、身共の力を借りたいというのだな」
「さようでござる」
「よかろう、女子が拐されたのを、それも当家の忍び者によってというのを知って見過ごしたとあっては武門の沽券にかかわる」
叉一郎の判断は早かった。
「策はあるのか」
「恐れながら、若様の手勢に相手の目をひきつけていただき、その間に我らが忍び入って妹を救い出し、できるうるなら奸物を討ち取ろうと存念してござる」
「うむ。よかろう」
ふたたび、叉一郎の決断は迅速だ。だが、次の瞬間、驚くべき言葉を口にする。
「身共も打って出るとしよう」「若様、なにをもうされる」
古武士のごとく戦を前に獰猛な笑みを浮かべた叉一郎に、近習の山崎は目を剥いて驚愕した。
深更に叩き起こされたというのに叉一郎は快活な口調で告げた。
「実は」
宗左衛門は顔をあげてここにいたるまでの経緯を手短に説明する。
「ふむ、なるほど。それで、身共の力を借りたいというのだな」
「さようでござる」
「よかろう、女子が拐されたのを、それも当家の忍び者によってというのを知って見過ごしたとあっては武門の沽券にかかわる」
叉一郎の判断は早かった。
「策はあるのか」
「恐れながら、若様の手勢に相手の目をひきつけていただき、その間に我らが忍び入って妹を救い出し、できるうるなら奸物を討ち取ろうと存念してござる」
「うむ。よかろう」
ふたたび、叉一郎の決断は迅速だ。だが、次の瞬間、驚くべき言葉を口にする。
「身共も打って出るとしよう」「若様、なにをもうされる」
古武士のごとく戦を前に獰猛な笑みを浮かべた叉一郎に、近習の山崎は目を剥いて驚愕した。
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