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「おぬし、先だってそれがしを襲った忍びだな」
 宗左衛門の言葉に、中間は余計に焦りをつのらせるのが見ていてわかる。
「ちょうどよい、話を聞かせてもらおう」
 宗左衛門とよわは油断なく距離を詰めていった。
 万全の状態でも宗左衛門にかなわかったというのに、片足が不自由な状態で勝てるはずもなく中間に化けた忍びは抵抗むなしく捕えられる。

    三

 とわが姿を消してからも、与助たちの談合はつづいている。
「あっしは旦那を見損ないましたぜ」
 長屋の壁を突き抜ける勢いで卯吉の声がひびいた。
 一方、彼と座して向かい合う与助の表情は対照的に力がない。そんな彼を卯吉の隣に腰をおろしている金次が気づかわしげな顔で見すえていた。
「とわが死にかけたのだ、気安くこの件にかかわりつづけることはできない」
「おとわが心配だってんなら、どこぞにけりがつくまで預けるって手もあるじゃねえか」
 気弱な与助を叱るように卯吉がさらに言葉をかさねる。
「卯吉、声が高いさあ」
 そんな彼を金次がたしなめた。
 これに対し卯吉は八つ当たり気味に鋭い視線を彼へと向ける。だが、彼も御用聞きだ、単なる破落戸の類とは違う。金次の言葉が正しいことを認め舌打ちをもらし、彼から目線をそらした。
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