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「下手人は無数の犬をしたがえた者だと申しておりましたが、そやつはおそらく清峰忍群の獣遁使いでしょう」
「清峰といえば、肥後の小国だな」
「元々、我らは清峰を治める富樫家に仕える侍を殺めた辻斬りを空拳仕置き人の仕置きにかけるために追っておりました」
「つまり、たんなる辻斬りに殺されたのではないのだな、その侍は」
「さよう。下手人を見つけるために探りをいれていたところ、忍びらしき者たちにとわが襲われた次第です」
「それがしと出会うた夜か」
はい、という与助の言葉に、宗左衛門はつくづく自分に運に見放されていることを悟った。いくら富樫家の上屋敷が近所にあるとはいえ、とわが襲われているところに行き交うなど運が悪いにもほどがある。
「おそらくは、くだんの侍は御家騒動などに巻き込まれて殺されたのでしょう。嗅ぎまわった我らに忍びが差し向けられたのがいい証左です。富樫家家中の上の者がかかわっているはず」
「そのひとりが、獣遁使いとやらということか」
「さよう」
「だが、よく犬を使うからといって清峰忍群とやらの一員だとわかったな」
「――そのような者を代々したがえていると耳にしたことがありますれば」
ん、と宗左衛門は内心首をかしげる。一瞬、わずかにだが与助の返答に間があったような。だが、あるかなしか、というものだったためそれがなにか意味があるものなのか判じかねた。
「清峰といえば、肥後の小国だな」
「元々、我らは清峰を治める富樫家に仕える侍を殺めた辻斬りを空拳仕置き人の仕置きにかけるために追っておりました」
「つまり、たんなる辻斬りに殺されたのではないのだな、その侍は」
「さよう。下手人を見つけるために探りをいれていたところ、忍びらしき者たちにとわが襲われた次第です」
「それがしと出会うた夜か」
はい、という与助の言葉に、宗左衛門はつくづく自分に運に見放されていることを悟った。いくら富樫家の上屋敷が近所にあるとはいえ、とわが襲われているところに行き交うなど運が悪いにもほどがある。
「おそらくは、くだんの侍は御家騒動などに巻き込まれて殺されたのでしょう。嗅ぎまわった我らに忍びが差し向けられたのがいい証左です。富樫家家中の上の者がかかわっているはず」
「そのひとりが、獣遁使いとやらということか」
「さよう」
「だが、よく犬を使うからといって清峰忍群とやらの一員だとわかったな」
「――そのような者を代々したがえていると耳にしたことがありますれば」
ん、と宗左衛門は内心首をかしげる。一瞬、わずかにだが与助の返答に間があったような。だが、あるかなしか、というものだったためそれがなにか意味があるものなのか判じかねた。
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