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四
「首尾を聞こう」
開け放たれた障子の向こうに広々とした庭園が作られている。池の青、小島の緑、橋の灰色で構成された彩りに富んだ風流な景色を、水面の月光の反射が砕かれた宝玉の破片のごとくいろどっていた。
この場所、敷地に立つ屋敷の実質的な主といっていい老人と、権之助は上座と下座にわかれて向かい合っている。
当たり前、だとは思っていない。
巡り合わせがよければ、己が上座から老爺を見下していた可能性もあった。
それが、汚れ仕事の宰領とはな――皮肉でほおがゆるみそうになるのを口を開けることで誤魔化す。
「失敗りましてござる」
「なに」
自分の意のままになって当然、そんな傲慢さのにじむ声を老人がもらした。
「小娘ひとりと思っておりましたが、途上で手練の浪人者、一味らしき者と遭遇し手勢をわけたところ娘を見失いもうした」
「浪人者は」
「町方の物らしき呼子笛が鳴りひびいたため、浪人者も見逃さざるをえない仕儀に」
「幾人もの手勢を率いておいて、小娘ひとり見逃してなんたるざまだ」
浪人者のほうはしかたがないと判断したらしいが、失敗りのすべてを赦す気は老人にはないようだ。地道な活動の末にやっと小娘の尻尾をつかんだというのにそんなことなどお構いなしだった。
「首尾を聞こう」
開け放たれた障子の向こうに広々とした庭園が作られている。池の青、小島の緑、橋の灰色で構成された彩りに富んだ風流な景色を、水面の月光の反射が砕かれた宝玉の破片のごとくいろどっていた。
この場所、敷地に立つ屋敷の実質的な主といっていい老人と、権之助は上座と下座にわかれて向かい合っている。
当たり前、だとは思っていない。
巡り合わせがよければ、己が上座から老爺を見下していた可能性もあった。
それが、汚れ仕事の宰領とはな――皮肉でほおがゆるみそうになるのを口を開けることで誤魔化す。
「失敗りましてござる」
「なに」
自分の意のままになって当然、そんな傲慢さのにじむ声を老人がもらした。
「小娘ひとりと思っておりましたが、途上で手練の浪人者、一味らしき者と遭遇し手勢をわけたところ娘を見失いもうした」
「浪人者は」
「町方の物らしき呼子笛が鳴りひびいたため、浪人者も見逃さざるをえない仕儀に」
「幾人もの手勢を率いておいて、小娘ひとり見逃してなんたるざまだ」
浪人者のほうはしかたがないと判断したらしいが、失敗りのすべてを赦す気は老人にはないようだ。地道な活動の末にやっと小娘の尻尾をつかんだというのにそんなことなどお構いなしだった。
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