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 敏感にこちらの気配を察したのか単なる気まぐれか、あきが門から表に姿を現したのだ。
 その姿を目の当たりにしたとたん、宗左衛門は背筋が凍りつくのを感じる。同時に、自然と足が止まっていた。
 刹那、あきが怒涛の勢いでこちらへと駆け寄ってくる。
 その顔つきはどう控え目に見ても“激怒”の二文字以外のなにものでもない。
 三間ほどに距離が詰まったところで、
「人にお役目を押しつけておいて、己は女遊びとは」
 怒りで声を詰まらせながら、あきは地面を強く蹴って跳躍した。
 顔面に肉薄する妹のひざを、宗左衛門はとっさに身を低くして交差させた腕の谷間にはさむようにして受け止める。
 失敗った、と瞬間に判断したあきは曲げていたひざを伸ばしこちらの胸のあたりに蹴撃をあびせてとんぼ返りを打った。ひとつ数をかぞえる間に一間ほど先に着地を決める。そして、ふたたび罵声をあげようと口を大きく開けた。
 年頃の娘がはしたないぞ、あき――宗左衛門は妹の足の裏を受けて少し息をつまらせながらも、当人が聞いたら怒りそうなことを思う。
 あきの怒声がほとばしり出るかという瞬間、
「わたしは曲者に襲われていたところを助けていただき、帰途も同じ方向ということで、こうして途中まで同道願ったのです」
 例の娘がどこか哀れな声で、宗左衛門自身が初耳の情報が半分混じった言葉を口にした。
 帰途も同じ方向で同道した? 
「……そうなのですか、兄上」
 気勢を殺がれたあきは、微妙な顔でたずねる。
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