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 球形の弾力を持った物体が形を崩すのが感触でわかる。
 睾丸を破壊された最後の忍びは声もなくその場に倒れた。おそらく、あまりの痛みに悶絶死しているはずだ。
 それを視野におさめながら宗左衛門は油断なく立ち上がる。ひとりは未だ意識を保っているし、先ほどの者たちがもどってこないとも限ら――と考えたところで、猛烈な速度で近づく気配を彼は感知した。
 先ほどと同じく、ただし方向は反対側から影が飛んでくる。
 こちらの間合いの外に降り立った相手は、
「なんだ、この体たらくは」
 といらだたしげな声をあげた。先ほどの宰領らしき男の声音だ。

 あの小娘め、俊敏さを身上とする我らよりを上回るか――権之助は家屋の屋根を足場にして宙を舞いながら憤懣たる思いを抱いた。同行した手の者にあたりを探索させているがまず見つからないだろう。
 旋風(つむじ)を巻きながら降下。先ほど娘の一味らしき若造と出くわした場所へと降り立った。
 中空にいたときから気づいていたことだが、若い浪人らしき男は衣装が汚れてこそいるが未だに無傷で佇立していた。
 一方、権之助の手下はというと、ふたりが地面が倒れて動かず残りの者も見たところ片足が使い物にならないようすだ。
「なんだ、この体たらくは」
 叫びそうになるのをなんとかこらえる。
 そして、この状況をまねいた若造へと権之助は視線を向けた。
 こやつ――その顔貌に見覚えがあるような気がする。その目もとや鼻梁が記憶のどこかにある誰ぞと一致するように思えた。
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