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「ドン・セバスチャンは主の教えにしたがい、さっそく悪魔の巣窟を破壊せしめたようですね」
「あなたの差し金か、こたびの一件は」
「差し金とはなんですか、差し金とは。正しき教えをドン・セバスチャンに教授し、正しき導きを与えただけです」
在昌の詰問にカブラルは笑みをくずさぬままに応じた。
カブラルがなぜ、ドン・セバスチャン、宗麟の次男と交流を持つことになったか、それは彼が出家をなんとしても受け入れなかったためだ。『彼は僧院で書物から学ぶどころか、武器をとり、撃剣、相撲、その他それに類した修練に専念して、もし国主が自分を無理やりに僧侶にするつもりなら、切腹して果てるか海で投身自殺する、と言った。国主は(息子)がどんなに恐るべき、かつ激しい性格かを知っていたので、彼にとって(息子)のことは重荷であり憂慮であった』という。
宗麟は次男の過激な性根を心配し、カブラル神父に相談したのだ。カブラルは彼に、息子が冷静になりその激しく頑固な性根が克服されるためには国主が次男を切支丹にさせる以外に救う方法はない、と説いた。宗麟もそれが十四歳の息子に対する最善の方法と思い、カブラル神父によって洗礼を受けさせた。
洗礼の事実を知った正室、奈多夫人は息子に翻意をせまったが当人の決意は固く教会に熱心に通いつめるのを止めない。
こういった経緯を経て、宗麟の次男は持ち前の破綻した人格の本領を発揮し凶行に走ったのだ。
「争乱、それが神の教えの真の恩寵だ」
目の前が真っ暗になっていた在昌は、カブラルの信じられない声で我に返る。
彼を凝視すると、その額からはえる二本の“角”が見えた。
「悪魔め」と叫んだところで在昌は自分の声で目を覚ます。
「あなたの差し金か、こたびの一件は」
「差し金とはなんですか、差し金とは。正しき教えをドン・セバスチャンに教授し、正しき導きを与えただけです」
在昌の詰問にカブラルは笑みをくずさぬままに応じた。
カブラルがなぜ、ドン・セバスチャン、宗麟の次男と交流を持つことになったか、それは彼が出家をなんとしても受け入れなかったためだ。『彼は僧院で書物から学ぶどころか、武器をとり、撃剣、相撲、その他それに類した修練に専念して、もし国主が自分を無理やりに僧侶にするつもりなら、切腹して果てるか海で投身自殺する、と言った。国主は(息子)がどんなに恐るべき、かつ激しい性格かを知っていたので、彼にとって(息子)のことは重荷であり憂慮であった』という。
宗麟は次男の過激な性根を心配し、カブラル神父に相談したのだ。カブラルは彼に、息子が冷静になりその激しく頑固な性根が克服されるためには国主が次男を切支丹にさせる以外に救う方法はない、と説いた。宗麟もそれが十四歳の息子に対する最善の方法と思い、カブラル神父によって洗礼を受けさせた。
洗礼の事実を知った正室、奈多夫人は息子に翻意をせまったが当人の決意は固く教会に熱心に通いつめるのを止めない。
こういった経緯を経て、宗麟の次男は持ち前の破綻した人格の本領を発揮し凶行に走ったのだ。
「争乱、それが神の教えの真の恩寵だ」
目の前が真っ暗になっていた在昌は、カブラルの信じられない声で我に返る。
彼を凝視すると、その額からはえる二本の“角”が見えた。
「悪魔め」と叫んだところで在昌は自分の声で目を覚ます。
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