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「御前は“負けぬこと”が肝要でございます」
「そして、時機を待ち敵を討つ、か」
「さようにございます」
在昌がうなずくと、信長も大きくあごを引いた。
その後、去り際に信長は、
「仁右衛門は手厚く供養いたす」
という言葉を肩越しに投げた。
信長との対面の帰り、一の曲輪を出たひと気のない場所で一人の人物が声をかけてきた。
「もし」という声にとっさに、まさか弥惣次がまだ生きていたかと在昌は身を硬くする。
が、物陰から現われた人物が透波とはほど遠い公家の身なりをしているのを認めて少し警戒心がうすれた。
「久しいな、勘解由小路氏」
相手の正体は、二大陰陽師の家のひとつ土御門有脩(つちみかどありなが)だ。
先祖の安倍晴明を思わせるしもぶくれ、細い目鼻立ちをした男がこちらを鋭いまなざしで射抜く。もっとも、そんなものは複数の修羅場をくぐり抜けた在昌にとってはたいしたものではなかった。
だがいぶかしくはある。なにゆえ、かようなときに声を――。
「そして、時機を待ち敵を討つ、か」
「さようにございます」
在昌がうなずくと、信長も大きくあごを引いた。
その後、去り際に信長は、
「仁右衛門は手厚く供養いたす」
という言葉を肩越しに投げた。
信長との対面の帰り、一の曲輪を出たひと気のない場所で一人の人物が声をかけてきた。
「もし」という声にとっさに、まさか弥惣次がまだ生きていたかと在昌は身を硬くする。
が、物陰から現われた人物が透波とはほど遠い公家の身なりをしているのを認めて少し警戒心がうすれた。
「久しいな、勘解由小路氏」
相手の正体は、二大陰陽師の家のひとつ土御門有脩(つちみかどありなが)だ。
先祖の安倍晴明を思わせるしもぶくれ、細い目鼻立ちをした男がこちらを鋭いまなざしで射抜く。もっとも、そんなものは複数の修羅場をくぐり抜けた在昌にとってはたいしたものではなかった。
だがいぶかしくはある。なにゆえ、かようなときに声を――。
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