切支丹陰陽師――信長の恩人――賀茂忠行、賀茂保憲の子孫 (時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

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　瞬間的に炎が視界でふくれあがるのを在昌は目撃する。活発に活動する火山の火口に呑まれたのか、そう錯覚しそうになるほどの圧倒的な光景が拡がった。
　同時に、爆発の衝撃を受けて在昌は引っくり返った。
　すぐに彼は仰向けの姿勢から腹ばいに姿勢を転換させ、仁右衛門のほうに視線を走らせる。仁右衛門の生存がありえないこと理解していても、そうせずにはいられない心情だったのだ。
　当然、そこに彼の姿などあるはずもない。
　視界に広がるのは身体の各部が散り散りになった複数の死体だ。仁右衛門の自爆に巻き込まれて、悪徒たちもまた大きな被害を受けている。在昌よりも大半が近い位置にいたこともあって、ほぼ全員が死傷していた。
　しかし、安堵の気持ちはわいてこない。
　傷を受けたわけでもないのに胸に深く大きな穴が空いた心地がする。
　だが、承知してもいる。ここでこうして呆然としていることが仁右衛門の思いを裏切ることになると。
　生き延びねばならない、彼の思いに報いるために。使命感にも似た思いで己をふるい立たせた。
　その最大の障害がふたたび出現する。