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番をする士卒がたたずみ、さらに余の者が行き交うなか、彼らの目に止まることなく闇から闇へゆっくりとだが着実に人影が移動する。
音も気配もなく長い時間をかけて中腰の姿勢で歩いてきた影はひとつの陣屋へと滑り込むようにして侵入した。立場のある将士のそれとは違う、陣のややはずれのほうにある小屋だ。
粗末な屋根のもと、褥のなかで眠るのはあきらかに公家の装をした男だ。白晳の顔、凹凸にとぼしい目鼻立ちはいかにも貴族のそれを思わせる。相手に気取られることなく、その枕元に影はひざ立ちになった。そして、腰の短刀を抜き放って相手の首筋にぴたりと当てる。
この瞬間になって相手はやっと目を覚ました。とたん、男の双眸は愕然と見開かれる。動揺のままに口を開こうとするのを、
「声を出すな。出すと殺す」
低い殺伐とした声で制止する。むろん、強烈な殺気をたたきつけるのを忘れない。
とたん、かすかに空気がもれるような音だけが男の口からはした。
音も気配もなく長い時間をかけて中腰の姿勢で歩いてきた影はひとつの陣屋へと滑り込むようにして侵入した。立場のある将士のそれとは違う、陣のややはずれのほうにある小屋だ。
粗末な屋根のもと、褥のなかで眠るのはあきらかに公家の装をした男だ。白晳の顔、凹凸にとぼしい目鼻立ちはいかにも貴族のそれを思わせる。相手に気取られることなく、その枕元に影はひざ立ちになった。そして、腰の短刀を抜き放って相手の首筋にぴたりと当てる。
この瞬間になって相手はやっと目を覚ました。とたん、男の双眸は愕然と見開かれる。動揺のままに口を開こうとするのを、
「声を出すな。出すと殺す」
低い殺伐とした声で制止する。むろん、強烈な殺気をたたきつけるのを忘れない。
とたん、かすかに空気がもれるような音だけが男の口からはした。
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