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「命の危険と秤にかければしかたがないでしょう」
「時間を無駄になどできるか、わたしはひとりでも先を急ぐぞ」
本願寺の挙兵を幾人かの僧が刀をふりかざしている程度のこととでも考えているのか、カブラルは正気とは思えない発言におよんだ。
いい加減にしろ、と怒鳴りつけたくなるのを在昌は必至にこらえる。
『頼みました、マノエル』脳裏にヴィレラの哀願の表情が浮かんだ。記憶に強く残る、師の視線を在昌は撥ね退けることができない。自分がこれから告げるせりふを思うと心のうちでため息がこぼれる。
「わかりました。では、まずどういう状況なのか詳細をまず確認することにします」
「よし。どこに行けばよいのだ」
心の疲労をにじませる在昌の妥協の言葉に、カブラルが傲岸不遜な表情で応じる。
「伴天連(バテレン)の方々はここで待機していてください。日本では目立ちすぎます」
「なんだと」
「ここは異国の地、現地の者にまかせるのが適切でしょう、伊留満(イルマン)」
在昌にふたたび噛みつこうとするカブラルを脇からオルガンティノが諭した。理解のある人物が司祭(パードレ)として同道していてくれて助かった、とてもではないがひとりでカブラルのお守はできない。
オルガンティノを見据えるカブラルのまなざしには、布教長はわたしだぞ、そんな傲慢が透けて見える。
「いいだろう」だが、同宿、従者もふくめ周囲の者がみな、己に対し好意的ではない視線を向けていることに気づいた彼は、不満げなようすながらもあごを引く。
これでは先が思いやられる――在昌は精神的な疲労から強烈な脱力感に襲われた。
翌日、在昌は仁右衛門とともに方々で、争いを避けてきた行商人、近隣在住の百姓、そういった者たちを相手に話を聞いてまわった。
「時間を無駄になどできるか、わたしはひとりでも先を急ぐぞ」
本願寺の挙兵を幾人かの僧が刀をふりかざしている程度のこととでも考えているのか、カブラルは正気とは思えない発言におよんだ。
いい加減にしろ、と怒鳴りつけたくなるのを在昌は必至にこらえる。
『頼みました、マノエル』脳裏にヴィレラの哀願の表情が浮かんだ。記憶に強く残る、師の視線を在昌は撥ね退けることができない。自分がこれから告げるせりふを思うと心のうちでため息がこぼれる。
「わかりました。では、まずどういう状況なのか詳細をまず確認することにします」
「よし。どこに行けばよいのだ」
心の疲労をにじませる在昌の妥協の言葉に、カブラルが傲岸不遜な表情で応じる。
「伴天連(バテレン)の方々はここで待機していてください。日本では目立ちすぎます」
「なんだと」
「ここは異国の地、現地の者にまかせるのが適切でしょう、伊留満(イルマン)」
在昌にふたたび噛みつこうとするカブラルを脇からオルガンティノが諭した。理解のある人物が司祭(パードレ)として同道していてくれて助かった、とてもではないがひとりでカブラルのお守はできない。
オルガンティノを見据えるカブラルのまなざしには、布教長はわたしだぞ、そんな傲慢が透けて見える。
「いいだろう」だが、同宿、従者もふくめ周囲の者がみな、己に対し好意的ではない視線を向けていることに気づいた彼は、不満げなようすながらもあごを引く。
これでは先が思いやられる――在昌は精神的な疲労から強烈な脱力感に襲われた。
翌日、在昌は仁右衛門とともに方々で、争いを避けてきた行商人、近隣在住の百姓、そういった者たちを相手に話を聞いてまわった。
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