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「何事ですか」在昌は一同を代表してたずねた。伴天連(バテレン)たちより自分のほうが話しやすかろうという判断だ。
 カブラルにいたってはこちらの言葉を習得するつもりさえないからこういう折には役に立たない。彼はただ怪訝な顔で目線をさ迷わせるばかりだ。
「本願寺が兵を挙げた」
「本願寺が」声を上ずらせる主に聞き返しながらも、在昌は血の気が引くのを感じた。
 自然な連想で答えは導き出される。この間近で本願寺が兵を挙げる相手といえば、彼がなんとか接触を求めようとしている相手しかいない。
 すなわち、織田信長。
 たやすく敗れるとは思わぬが――。
 戦の最中に奇襲を受けたのだ、やはり心配ではある。
「相手は織田の殿様だそうだ。あんたがた、織田の殿様にお会いになるために旅をされてこられたんだったよな」
「さよう」
「難儀だなあ、それは」
 素朴な顔を渋面にし主は同情のこもった声で告げた。
「いかが、なさる」
「談合いたして決めることにいたします」
「そうかそうか。物騒なことになったし、気をつけなされよ」
 しゃべっているうちに興奮の熱も引いてきたらしく、会話を打ち切るや主は去っていく。近隣で戦が起きたとなれば彼自身も避難などを考えなければならない。いの一番に知らせに来ただけでも感謝すべきだろう。
 在昌は表情を引きしめ、カブラルとオルガンティノ以外の者たちと視線を交わした。日本人の同宿、従者なども含め、不安が一様に彼らの顔にのぞいている。
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