切支丹陰陽師――信長の恩人――賀茂忠行、賀茂保憲の子孫 (時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 近隣で信長が戦に臨んでいるためだ。在昌だけでなく伴天連(バテレン)たちもまた、切支丹を優遇するこの覇者に会いたがっている。だが、戦陣のさなかにいるとあってはなかなかそれも叶わない。
 もっとも、こまれでの道のりも容易なものだったとは到底いいがたいが。
 なにしろ伴天連(バテレン)たちは後先考えず「自分は正しい」と信じて行動してしまう。
 自分たちに興味を抱いて近寄ってきた武士に対し、「男色は神の教えに反する」「あなたの誇る強さなど誇るべきものではない」などと真っ向から非難し、仏門を「悪魔の教えだ」といってはばからない。
 大友宗麟の保護の及ぶ地ではないにもかかわらず、だ。
 しかも、カブラルはそれに輪をかけて手におえない。
 今日、在昌たちは近くの百姓家に宿を求め一室を借り受けている。粗末ではあるが、百姓の主が用意した夕餉が彼らのもとに運ばれていた。戦国乱世、それも旅路でのことだ。食事にありつけるだけでもありがたい。
 が、
「日本の食事にはうんざりだ、黒人がこのわたしになんという物を食べさせる」
 カブラルが不満をあらわにする。
 ほかの伴天連(バテレン)たちも本音の部分では日の本の食事に馴染めないことを在昌は知っている。だが、だからといって悪し様にいえば現地の人間が気を悪くすることは幼子にでもわかることのため彼らは気を使ってそういう言葉は口にしないようにしていた。
 それどころか、先だって亡くなった老トルレスなどは本国の食事は止め日の本の食べ物のみをとるようにしていたものだ。
 そんな経緯もあり、切支丹たちは新しい布教長を困惑の目で見ている。
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