切支丹陰陽師――信長の恩人――賀茂忠行、賀茂保憲の子孫 (時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

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　その後、毛利は支配下に置いていた鎮西最大の山城・立花城、城址から博多湾を望む拠点を放棄し城番の兵を帰国させた。豊前の北端に位置する門司城のみを残しすべての軍兵を撤退させたのだ。
　この状況は、毛利軍の裏をかき山口へと攻め込む電光石火の策戦の敢行によって実現した。この策は宗麟が豊後に亡命していた大内輝弘、大内義興の弟高弘の子を利用して大内家再興を名分に駆りあつめた援軍をもって海路秋穂浦(あいおうら)に上陸させたのだ。
　これは老臣吉岡宗鑑の進言によるものとされているが、実は切支丹の言をいれたという事実をもって家中の反発をまねくことを憂慮した宗麟の思案によるもので、実のところ在昌の献策によるものだった。
　山口に進撃した大内輝弘軍は鎮西から帰国してきた毛利軍によってたちまち撃破され、大将輝弘は周防富海(とのみ)の茶臼山において家臣らと自害した。
　この報に接したとき、かの統領の死はこちにも大きな責がある、と在昌は思った。
　実は事前にアルメイダと同道して説得に当たっていたのだ。
　山口はもともと切支丹が最初に根をおろした土地であり、毛利に滅ぼされた大内家の当主・大内義隆の従兄弟輝広もまたゆかりがある。ために、切支丹大名へ火器弾薬の斡旋などで働いている“死の商人”の顔を持つアルメイダと説得をおこなった。

　最初、大内輝弘は渡海を渋った。当然ではある、毛利元就の恐ろしさを主家の滅亡という形で彼はまざまざと見せつけられているのだから。