切支丹陰陽師――信長の恩人――賀茂忠行、賀茂保憲の子孫 (時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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「怪我をなされたか」
 アルメイダの噂を聞きつけてやって来たかのと思って在昌はたずねた。
 凛々しい顔つきをした若い武士は、なにかをこらえるような顔つきでこちらを見すえる。
 相手が返事をしないことをいぶかしみ、在昌がなにか次の言葉をかけようかと考えたところで、
「父を丁重に弔っていただいた儀、嫡子として篤くお礼もうしあげまする」
 といって、口もとを一文字に引きむすんで深々と頭をさげたのだ。
 瞬間的に在昌のうちにこみあげるものがあり喉をつまらせる。
「礼など申さずともよい、当然のことをしたまでだ」
 在昌は若武者の肩に手をかけふるえる声で告げた。この者から父を奪ったのだ、こちは――そんな思いを胸に抱きながら。
 ただ一方で礼をのべてくれた者の存在は、在昌にとって切支丹の者にとっての聖書の教えほどにも感じられる救済となったのだ。

 在昌が耶蘇教への疑心を抱いたのはこのときだけではない。
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