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 傷病者が集められた陣屋で陣僧の手伝いをしながら在昌は暗澹とした思いを味わった。
 敵との槍交ぜで重傷を負った者たちがさらしを血に染めながらうめき、あるいはうわ言を口にする。
 この時世(ときよ)の日の本の医術は結句のところ運任せの感が否めない。アルメイダがこの場にいれば、あるいはもっと多くの者を救えるのだろうが。
 在昌にできることは励ますことだけだ。それが申し訳ない。夜討ちを防ぐための策は自分が立てた。そのため、策戦の実行で出た犠牲者がまるでおのれのせいで生じたかのように思える。
 しかも、
 大友の士卒を殺めたのはこちの兄――。
 その事実が余計に後ろ暗さを感じさせた。
 一体、どういう経緯があって現われたのかわからないが、実の兄が大友宗麟の命を狙い多くの者を殺害したのは事実だ。
 しかも、このことを余人に明かすわけにはいかない。そんなことをすれば、在昌は毛利との内通を疑われることにもなりかねず、それを避けえても兄の凶行の責任を問われかねない。そうなれば豊後に根を張る家族の暮らしをも脅かすことになりかねなかった。
 ゆえに、秘さなければならない。兄が下手人である事実を。
「大事はない、こらえるのだ」「神(デウス)は御前を見捨てない」
 患者への励ましの言葉がみずからの耳には白々しくひびく。
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