切支丹陰陽師――信長の恩人――賀茂忠行、賀茂保憲の子孫 (時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 抜刀一閃、在昌は太刀を鞘走らせた。次の瞬間、刀身に手応え。彼の一撃は飛来した矢の矢柄を砕き斬っていた。宙で矢柄が反転、矢羽が在昌の胸にぶつかる。正直、運がよかった。矢砕きという何度の高い業を幾度もつづけられるとは思えない。
「己、下郎」報告へとやって来た馬廻が太刀を抜き放って夜討ちの一隊へと突進する。
 その瞬間、ちょうど例の敵の尋常でない業前の者は得物の穂先を失っていた。
 これなら勝てるやもと思ったが、在昌はみずからが抱いた考えを即座にくつがえされる。
 電光の迅さで例の軽装の武者は小太刀を抜き放つや投擲した。それが狙い違わず、くだんの馬廻の眼窩に突き刺さったのだ。
 化物め――在昌は相手の水際立った業前に肌をあわだたせる。
 そんな彼が見守る前で、複数の馬廻の腕利きたちが敵へと殺到していった。
 転瞬、彼らのうちふたりの眼窩に棒手裏剣が突き立ち、さらには敵の太刀によって腿を裂かれている。そこに余の夜討ちの士卒の槍働きが加わった。
 結果、勢いに乗ったまま敵が刀槍の間合いにまでせまる。自分ひとりでは相手取るのは無理だ、在昌は寒気を感じながら空を見上げた。
 とたん、総身が打ち震えるような感覚をおぼえる。
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