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 その態度にふれ、在昌の胸が少し痛む。大友家に仇なすわけではないのだ、彼は声に出さずに己に言い聞かせた。
「陰陽師の秘術をもちいまする。ゆえに、こちに一任願いたいのでございます」
「陰陽師の秘術か、それは心強いの」
 在昌の返答に彼は対面して初めて表情を明るくした。またも、在昌の心のうちに後ろ暗さがわきあがるが強引にそれを抑えつける。
「そのために一つご配慮願いたい儀が」
「なんだ」
「我が下男の仁右衛門が土地の“気”を確かめるための手助けとして方々を、大友家の陣営を自儘に歩きまわる必要がございます。それを」
「許せというのだな。よい、勘解由小路殿がもうすように早々にはからえ」
 前半を在昌に、後半を宗麟は馬廻に告げる。
 とりあえず、角隈石宗の邪魔を乗り越え屋形に目通りすることに成功した。これが果たせなければそもそも話になららないのだから大きな成果ではある。だが、在昌の緊張はまったく減じていない。むしろ、強まってさえいる。
 先ほどの仁右衛門が自由に歩きまわることの許諾を得たのは別に土地の気が云々というのが本当の理由ではない。実は、仁右衛門が毛利方が夜討ちをもくろんでいるという秘事をつかんだ。そのため、それを防ぐための方策が必要となった。
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