切支丹陰陽師――信長の恩人――賀茂忠行、賀茂保憲の子孫 (時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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「わざわざ呼びたててすまぬな」
 宗麟は謝罪しながらも、すでに意識は本題へと向いているようすだ。
「いえ、御屋形様のお下知であればいつ、いかなるときでもまかりこす所存でございます」
「うむ、さように存念してくれるとわしも助かる。して、こたびの用向きだがの」
 して、というせりふ以降の宗麟のしゃべりが急くようにやや早口になる。
「数日前、空から星が落ちるのを我が家中の多くが目の当たりにしたのだ。わしみずからも目撃した」
「聞き及んでございます」
 宗麟の言葉に在昌は相手を安心させるように深々とうなずいた。
 それはそうだ、なにしろその流れ星は彼が“落とさせた”。
 
 サンチェスが灯りを人魂と間違えた夜に、時間はさかのぼる。
 在昌は“見間違え”という出来事に触発され、角隈石宗の妨害を乗り越えるひとつの策を思いついた。それは、仁右衛門に特性の火矢を射させ、大友宗麟や家中の者に手製の“流星”を見せることだ。
 古来、彗星というのは不吉なものとして考えられている。ために、もしそれが戦の折に見えようものなら必ずやその吉兆の判断を求めるだろうと在昌は予測したのだ。軍配者も吉兆を判断するが、やはりそこは賀茂の裔である自分にお鉢がまわってくるだろう、そう先の展開を予想した。それが図に当たったのだ。
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