切支丹陰陽師――信長の恩人――賀茂忠行、賀茂保憲の子孫 (時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 家中が一致団結していれば侵略に対し気勢もあがろうというものだが、続々と反旗をひるがえす者が現れかつ強大な毛利家と干戈を交えるという状況なのだから士気がさがるのも致し方ないだろう。
 軍記物語の描くところと違って戦というものは遠戦が中心ではあるが、不意の遭遇戦や城攻めともなればやはり死傷者が大量に出る。仲間や顔見知り、まったく面識のない者、そういった別なく人が死に行くのを目の当たりにし己が落魄することを恐れていた者も、それが長引くうちに死ぬことへの恐怖よりもうんざりとした思いが勝るようになるものだ。そういった空気が大友の陣営の軍兵の間には見受けられる。
 しかも、
「見たか」「ああ、見た」「不吉だ」「星が地に落ちた」
 彼らは死とは別のことも恐れているようすだ。
 それは在昌が大友の本陣へと足をはこんでいることにも関係していた。こたびの訪問は、屋形である宗麟のじきじきの召し出しだ。ために、さすがの石宗も邪魔立てすることができない。
 士卒のなかには賀茂、陰陽師という言葉を交わしながら在昌に目を向ける者もいた。彼らは一様に期待と不安が入り混じったような目をしている。
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