81 / 167
81
しおりを挟む
「ほう、それは面白い」
中身を聞き終えた仁右衛門は興が乗ったようすで首肯する。
「なしうるか」「しかとはもうせぬが、まず十中八九はいけるだろう」
在昌の質問に、仁右衛門はまかせておけとばかりに笑みをひらめかせる。
他方、在昌を歓喜させる出来事はほかにもあった。
先日、南蛮の天文の書が手に入ったのだ。サンチェスがデウス堂の書物を整理した折に見つけたといって持ってきてくれた。題名を『アルマゲスト』という。南蛮の天文の知識の結晶ともいうべき一冊、そのことをここ数日の空の観測で在昌は実感していた。
在昌は眠気を忘れて夜な夜な、目を無数の星々に負けないほどに輝かせながら空を見上げている。
書物に記されている通りに――正確に星は動いている。
星同士の距離や高度を、腕をいっぱいにのばして見たときの指の間隔ではかりおよその角度を割り出しては興奮するということをくり返していた。
惑星は、太陽の星座のなかの通り道である黄道十二星座のなかに必ず見えることを実感する。惑星は黄道星座のなかを行きつもどりつしながら、日にちがたつと星座のなかで位置を変えていくから他の星と見分けられた。
中身を聞き終えた仁右衛門は興が乗ったようすで首肯する。
「なしうるか」「しかとはもうせぬが、まず十中八九はいけるだろう」
在昌の質問に、仁右衛門はまかせておけとばかりに笑みをひらめかせる。
他方、在昌を歓喜させる出来事はほかにもあった。
先日、南蛮の天文の書が手に入ったのだ。サンチェスがデウス堂の書物を整理した折に見つけたといって持ってきてくれた。題名を『アルマゲスト』という。南蛮の天文の知識の結晶ともいうべき一冊、そのことをここ数日の空の観測で在昌は実感していた。
在昌は眠気を忘れて夜な夜な、目を無数の星々に負けないほどに輝かせながら空を見上げている。
書物に記されている通りに――正確に星は動いている。
星同士の距離や高度を、腕をいっぱいにのばして見たときの指の間隔ではかりおよその角度を割り出しては興奮するということをくり返していた。
惑星は、太陽の星座のなかの通り道である黄道十二星座のなかに必ず見えることを実感する。惑星は黄道星座のなかを行きつもどりつしながら、日にちがたつと星座のなかで位置を変えていくから他の星と見分けられた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ヴィクトリアンメイドは夕陽に素肌を晒す
矢木羽研
歴史・時代
カメラが普及し始めたヴィクトリア朝のイギリスにて。
はじめて写真のモデルになるメイドが、主人の言葉で次第に脱がされていき……
メイドと主の織りなす官能の世界です。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
渡世人飛脚旅(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)
牛馬走
歴史・時代
(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)水呑百姓の平太は、体の不自由な祖母を養いながら、未来に希望を持てずに生きていた。平太は、賭場で無宿(浪人)を鮮やかに斃す。その折、親分に渡世人飛脚に誘われる。渡世人飛脚とは、あちこちを歩き回る渡世人を利用した闇の運送業のことを云う――
信乃介捕物帳✨💕 平家伝説殺人捕物帳✨✨鳴かぬなら 裁いてくれよう ホトトギス❗ 織田信長の末裔❗ 信乃介が天に代わって悪を討つ✨✨
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
歴史・時代
信長の末裔、信乃介が江戸に蔓延る悪を成敗していく。
信乃介は平家ゆかりの清雅とお蝶を助けたことから平家の隠し財宝を巡る争いに巻き込まれた。
母親の遺品の羽子板と千羽鶴から隠し財宝の在り処を掴んだ清雅は信乃介と平賀源内等とともに平家の郷へ乗り込んだ。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる