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「ほう、それは面白い」
 中身を聞き終えた仁右衛門は興が乗ったようすで首肯する。
「なしうるか」「しかとはもうせぬが、まず十中八九はいけるだろう」
 在昌の質問に、仁右衛門はまかせておけとばかりに笑みをひらめかせる。

 他方、在昌を歓喜させる出来事はほかにもあった。
 先日、南蛮の天文の書が手に入ったのだ。サンチェスがデウス堂の書物を整理した折に見つけたといって持ってきてくれた。題名を『アルマゲスト』という。南蛮の天文の知識の結晶ともいうべき一冊、そのことをここ数日の空の観測で在昌は実感していた。
 在昌は眠気を忘れて夜な夜な、目を無数の星々に負けないほどに輝かせながら空を見上げている。
 書物に記されている通りに――正確に星は動いている。
 星同士の距離や高度を、腕をいっぱいにのばして見たときの指の間隔ではかりおよその角度を割り出しては興奮するということをくり返していた。
 惑星は、太陽の星座のなかの通り道である黄道十二星座のなかに必ず見えることを実感する。惑星は黄道星座のなかを行きつもどりつしながら、日にちがたつと星座のなかで位置を変えていくから他の星と見分けられた。
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