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 先日出会ったアルメイダに彼の名前を聞いていた。「かの者は大友の御屋形様にお仕えする呪(まじな)い師です」と。それを聞いたとき、少し嫌な予感がした。陰陽師の家の生まれであるこちのことをこころよく思わぬやもしれぬ、そう考えたのだ。
「貴殿は賀茂の裔としてさぞやすぐれた陰陽道の術を学ばれたことでござろう」
「さほどでも」
「されど」在昌がとりあえず謙遜の言葉を口にしようとしたがそれを石宗はあきらかな悪意を持ってさえぎる。
「それがしも足利学校で兵法、卜占などについて学びもうした。その業前はけっして京の陰陽師にも劣りはせぬと自負しておりまする」
「さようか」挑みかかるようなまなざしを向ける石宗に在昌は鼻白んだ。
 足利学校とは禅宗の学校で易学を主に教えていた。戦国乱世の当時、後世の人間が考える以上に易・占、祈祷などが重要視されていた。それを担ったのが軍配者であり、多くの軍配者を輩出したのが足利学校だ。
 たとえば、毛利元就の三男で小早川家を継いだ小早川隆景は玉仲宗琇(ぎょくちゅうそうしゅう)と白鷗玄修(はくおうげんしゅう)の二人を招いており、九州の大名鍋島直茂も不鉄桂文(ふてつけいぶん)をもちいている。彼らはみな足利学校の出身者だ。さらには、上杉景勝の重臣直江兼続が涸轍祖博(こてつそはく)を、大御所時代の徳川家康の頭脳・天海も同じく足利学校で学んだ者たちだった。
 軍配者の兵法、卜占、天文などの業をもって大名に仕えている。この職掌は陰陽師の身につけているそれと大部分が重なっている、ために石宗は突如として豊後をおとずれた在昌を自分の立場を危うくするやもしれぬと警戒しているのだ。
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