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「も、もうしわけありませぬ」
「謝ることではないと思うがの」在昌の返答に宗麟はおかしそうなさらに声をもらす。
「京(みやこ)より参ったは神(デウス)の教えにより深く帰依するためということだが、耶蘇教のいかなる部分に惹かれたのだ」
自然な流れで発された言葉だが、在昌は一瞬逡巡した。どう、答えるべきか。
切支丹への入信は“より深く暦に通じるため”というのが彼の本音だ。もしかすると異国(とつくに)の者であれば自分の知らない天文の知識を持っているかもしれないと司祭(パードレ)ヴィレラのもとを訪れたのが六年前、実際その期待に違わず彼は日の本の天文の常識をくつがえす話の数々を披露してくれた。
爾来、在昌は耶蘇教に強く惹かれるようになっている。ただし、なによりも魅力を感じたのは司祭(パードレ)が教授する智恵の部分だ。
だが、ヴィレラと交流するなかで在昌がそういった本音の部分がのぞくような言動をとると周囲にいる京の切支丹はいい顔をしなかった。自然と在昌も心のうちを秘してふるまうようになっていた。
しかし、そんなふうに周囲と接するのは息苦しいものだ。
新天地で常にかように行動するのは避けたい、そんな思いを抱く。
宗麟入道殿は耶蘇教の教えを信じておられるというが、屋形としてのふるまいも求められる――。
必ずしも自分の本音の部分を否定するとは限らない、そう在昌は考えた。
「耶蘇教の“知”に惹かれもうした」
「耶蘇教の“知”か」
彼の返答に宗麟が思案げな顔をする。
「謝ることではないと思うがの」在昌の返答に宗麟はおかしそうなさらに声をもらす。
「京(みやこ)より参ったは神(デウス)の教えにより深く帰依するためということだが、耶蘇教のいかなる部分に惹かれたのだ」
自然な流れで発された言葉だが、在昌は一瞬逡巡した。どう、答えるべきか。
切支丹への入信は“より深く暦に通じるため”というのが彼の本音だ。もしかすると異国(とつくに)の者であれば自分の知らない天文の知識を持っているかもしれないと司祭(パードレ)ヴィレラのもとを訪れたのが六年前、実際その期待に違わず彼は日の本の天文の常識をくつがえす話の数々を披露してくれた。
爾来、在昌は耶蘇教に強く惹かれるようになっている。ただし、なによりも魅力を感じたのは司祭(パードレ)が教授する智恵の部分だ。
だが、ヴィレラと交流するなかで在昌がそういった本音の部分がのぞくような言動をとると周囲にいる京の切支丹はいい顔をしなかった。自然と在昌も心のうちを秘してふるまうようになっていた。
しかし、そんなふうに周囲と接するのは息苦しいものだ。
新天地で常にかように行動するのは避けたい、そんな思いを抱く。
宗麟入道殿は耶蘇教の教えを信じておられるというが、屋形としてのふるまいも求められる――。
必ずしも自分の本音の部分を否定するとは限らない、そう在昌は考えた。
「耶蘇教の“知”に惹かれもうした」
「耶蘇教の“知”か」
彼の返答に宗麟が思案げな顔をする。
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