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晴幸と行った湯屋、兄との夕餉共々ほとんど記憶に残らない。いったい、わざわざ待ち合わせて何を告げようというのか、そのことが気になって結局一睡もできないままにすずめの鳴き声を聞く羽目になった。
それから子の刻までがまた長かったが、過ぎてしまうとその時間が現実のものであったかもすら怪しく感じるほど現実感を欠いていた。
そうして、待ち合わせの場所に向かう。早めに足を向けたのだが、先に志乃が境内の隅で待っていた。その顔には悲愴ともいえる覚悟が浮かんでいる。
参った、ほかに言葉が見つけられず助之進は志乃を少し上目づかいに見るようにして告げた。
それに志乃は無言で小さくうなずく。
「それで」
「わたしと一緒に伊勢まで足を運んで、助之進」
問いかける言葉をさえぎって志乃が叫ぶようにして訴えた。
伊勢、と眉をひそめて聞き返すと、
「わたしと抜け参りをしてほしいの」
と彼女は声を低めて言葉をかさねる。だが、そのようすがかえって冷静になっても考えが変わらないという事実をあらわしているようで覚悟のほどを感じさせた。
それから子の刻までがまた長かったが、過ぎてしまうとその時間が現実のものであったかもすら怪しく感じるほど現実感を欠いていた。
そうして、待ち合わせの場所に向かう。早めに足を向けたのだが、先に志乃が境内の隅で待っていた。その顔には悲愴ともいえる覚悟が浮かんでいる。
参った、ほかに言葉が見つけられず助之進は志乃を少し上目づかいに見るようにして告げた。
それに志乃は無言で小さくうなずく。
「それで」
「わたしと一緒に伊勢まで足を運んで、助之進」
問いかける言葉をさえぎって志乃が叫ぶようにして訴えた。
伊勢、と眉をひそめて聞き返すと、
「わたしと抜け参りをしてほしいの」
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