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 いよいよ、ここまでか――アルメイダは強烈な吐き気をこらえながらも晴れ晴れとした思いを抱いた。なれば、滑稽なこの人生、締めくくりも滑稽に終えるとしよう――。
 彼はおぼつかない足取りで幹から姿をさらした。そして、鉄砲の撃ち手がいるとおぼしき方角に向けて短筒の銃口を向けながら歩き出す。
 まだ装填が間に合わないのか銃声は聞こえない。
 おかしな表現だが静寂が質量をもってのしかかってくる。一歩一歩が重かった。
 歩みは止めない。いずれ強制的に終わりがおとずれるとしても。
 そして、それは来た。
 二発の銃声が。耳に届いた。
 なぜ、アルメイダは首をひねる。その動作と同時に自分がどこも撃たれていないことを自覚した。
 呆然となりながらアルメイダは周囲に視線をめぐらせる。
 すると、二筋の硝煙が立ち昇っているのに気づいた。ひとつは例の撃ち手のものであることは方角から明白だ。
 しかし、もうひとつは――と考えかけて、アルメイダはひとつの可能性に思い至る。
 とたん、彼は正体の知れないほうの撃ち手の方向へと全力で駆けていた。
 砕けた肩がいよいよ頭蓋に錐をさしこむような痛みを走らせる。
 けれども、速度をゆるめる気にはすこしもなれない。
 お陰で数えるほどの時間で硝煙のもとに到達した。樹木の陰へとはやる思いでまわりこむ。アルメイダは目の前の光景に息を呑んだ。
 両手を中心にひどい傷を負った次郎丸が顔面を蒼白にして倒れている。
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