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 肩が爆ぜた、そんな錯覚をアルメイダはおぼえた。
 だが、現実は連想した事象と相違ないものだ。右肩を銃丸にかすめられている。肉を裂かれ、骨を砕かれた。
 それでもとっさに近くの樹木の陰に身をひそめることができたのは強靭な精神の賜物だろう。
 アルメイダは苦笑を浮かべた。
 心根が強いのなら、かつての過ちをとうに克服しているだろうに――。
 総身にわきでた脂汗のせいで、残った左手で取り出した短筒を取り落としそうになる。
「司祭(パードレ)」と了斎が叫ぶのは聞こえた。声のほうを確認すると、相変わらず荒れ狂う嵐のごとき攻防をくり広げている。
「あなたはあなたの“敵”とけりをつけてください」
 アルメイダはからからに乾いた喉から無理やり声をしぼりだした。
 鉄砲で無辜の者の命を奪った己が鉄砲で撃たれて命を落とすやもしれぬ――これは罰なのだろうか、と彼は同時に心のなかでそんなことを思う。それともこれは神が与えたもうた試練なのか。
 いや、とすぐに反駁の声が頭の片隅からあがった。
 本音のところでいえば、船上で子供を撃ち殺してしまったあのときから彼は神を信じることができずにいる。
 地の底へと突き落としておきながら、「これが試練だ」と告げられたところでどうすればいいというのだ。灯火もなく暗い闇のなかをさ迷い、徒手空拳で天を衝くような断崖など登れるはずもない。
『司祭(パードレ)様』――脳裏に子供の声がよみがえる。
 それは殺めたしまった“あの子”ではなく、次郎丸のものだ。
 弟子、として遇しているが我が子のように思っている。
 その思いを彼は認めることができずにここまで来た。自分は咎人なのだ、幸せを得ることなど赦されない。だから、胸のわきあがってくる温かな感情を彼は押し殺してきた。
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