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 復讐の念に駆られるままに行動しようとした次郎丸が、みなのために大友家に仕える、それもそのためには生きなければならないと応じたのだ。己のうちの負の感情を乗り越え、かつ死地に臨むことにおびえるどころかその先を見すえるという態度は、もはや子供ではない。
 アルメイダ殿、おぬしの“償い”は間違ってはおらぬ――。

        ● ● ●

 縛にかけられ、足軽ふたりに見張られてアルメイダは毛利勢、吉川元春麾下の将士のまっただなかに囚われ歩かされている。周囲は人や馬が大地を踏む音、鎧櫃からもれる甲冑がこすれる音、雑談の声や馬のいななきで満ちている。
 このなかから逃げ出すのは至難の業、いや自分には不可能だろうと踏んでいた。
 周囲の軍兵のなかには忍びもまぎれてこちらを監視しているだろう。
 すでに大友の忍びが幾人か犠牲になるのを目撃し、あるいはその事実が嘲笑とともに足軽の口から「無駄なことを」というせりふ交じりに告げられていた。
 あるいは了斎ならば遁走も不可能ではないのではないか、とも思う。
 最初は無理やりに忍びとして立ち働くことを求めた。自分でも信仰を盾に無理強いすることの卑怯さはわかっているが、子供を誤って撃ち殺したあの日から罪をかさねることの覚悟はできている。いくら神を奉じようが、祈ろうが、きっと己は地獄に堕ちるのだ。
 悔い改めよ、と耶蘇教の言葉にはある。
 悔いるのはたやすい。
 だが、どう改めればいいのだ。今後のことはたしかに色々と心がけることはできる。
 しかし、過去を“改める”ことなどできないのだ。
 けれども――と思う。了斎の姿が脳裏に浮かんでいた。
 これまで彼と衝突したことなどアルメイダはない。そもそも、了斎という人間が信仰に疑問を呈すなどということがありえなかった。
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