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 が、真実、大内輝弘が乗船しているのは船団から先行する船足の早い南蛮船だ。風で帆を広々とふくらませ波涛を割って船体は迅影と化している。その道筋は敵の待ち伏せを警戒して迂回する軌道を描いていた。
 本来、南蛮人は厄介事に巻き込まれることを嫌い、このように直截的に肩入れすることは少ない。だが、そこは“切支丹の軍師”アルメイダの面目躍如だ。もともと、以前の毛利との戦で南蛮船に大火矢を撃たせた実績を持つ彼だ、貴顕のひそかな輸送のために南蛮船を調達するなど容易かった。
 こんな目立つ船に重要人物を乗せるはずなどない、そんな盲点をつきつつ、下手に南蛮人に危害を加えることで硝石の調達などに支障が出てはたまらないとどうしても南蛮船への対応はゆるいものになりながち、そういう点を利用している。進路を塞ぐ者もなく行程は順調に消化されていた。
 無数の魚が銀の鱗を光らせるようにして海原が陽光を反射し天の日輪と競い合うようにして輝いている。
 しかし少しもぐれば、光などすぐに届かなくなるものだ。
 了斎はきらめく水面を船べりから見据えながらもかつて忍びの修練の一貫で川へと飛び込んでは師が水底に投げ込んだ“徴”を見つけるということをくり返していたときのことを思い出していた。

 一丈近くもぐれば視界は色彩を失って暗くなる。徴はたやすく見つかるような大きさではなく、水の流れの急な場所でのことだ。抗いながら泳いでいるとすぐに息苦しくなってくる。総身が張りつめて破裂するような錯覚、焦慮と戦いながら目的の品を探す、漁る、求める。
 かすかにだが、あのときは“いっそ、このままあきらめれば楽になれる”という思いがきざすことがあった。
 そんな思いが特に強まったときに了斎は印象的な出来事に遭遇する。
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