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 今日はアルメイダ、大内輝弘とふたりの要人がそろっている瞬間が狙われた。実は、雨のせいで川が増水するという出来事があり、了斎たちが府内入りする日取りは予定とずれていた。それだというのいうのに狙いすましたようにアルメイダが大内輝弘と対面する機を狙ってきた。
 尼子の戦に合力したときも、了斎たちの存在が敵にもれていた。だからこそ、伏奸(ふせかまり)が配されていたに違いない。
 これらのことを考え合わせると、内通者がいるに相違ないという結論に達していた。
 問題は誰が、ということだ。
 あきらかに怪しいのは尼子の忍びふたり。
 それもアルメイダには告げていないが、了斎を「仇だ」といったれんが怪しかった。
「そのことについてはすでに手は打っておりまする」
 了斎は複雑な思いを抱きながら応じる。
 はぐらかされた、という感情もあり、己を仇だという娘を都合よく排除するような仕儀になっているような後ろ暗さも感じていた。

 府内からすこしはなれた集落の廃屋。
 深更に人がおとずれるのには不似合いなその場所に人影が姿を現す。
 その様を樹上からうかがう者の姿があった。了斎だ。
 頼む、違(ちご)うていてくれ――祈るような思いを胸に抱いていた。いや、神(デウス)よ、と声に出さずに唱えている。
 脳裏にはアルメイダの『しかも、あの折に父は海賊に殺されてしまった。私は贖罪をする相手すらもいなくなってしまった』という言葉がまたたいていた。
 過去から目を背けることで了斎は具体的な償いについて考えることを無意識のうちに拒んでいた。
 だが、実際に己を仇を呼ぶ者が現れた。無論、れんのことだ。
 仔細はわからない。しかし、己が重ねることを厭った行為、その犠牲のうちに怒りや悲しみにさいなまれるに至ったというのならやはり償わなければならない。お前はわたしにとって仇だ、と告げられてから頭の片隅でつづけた思索が導き出した答えはそういうものだった。
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