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 さすがに、城もまた無防備ではない。
 誰ぞが援軍を呼びに行ったらしく、士卒が勇み足で駆けつけてくる。
 間合いに入るや、穂先をそろえた槍で一斉に襲いかってきた。
 早(はや)――了斎と金介の姿はそのときには宙にある。士卒たちの頭上を飛び越えて背後へと着地を決めた。
 そのままふたりは本曲輪の方向を目指し駆ける。
「待て」と追随しようとする気配が背後から聞こえた声にはこもっていた。
 が、了斎が手をくだす必要はない。
 すこし遅れて複数の罵声、悲鳴が入り乱れた。追いついた尼子の士卒に城兵が襲われたのだ。城の兵の総数であればともかく、“この場”においては多勢に無勢だ。またたく間に刀槍の餌食となって血を流す肉の塊となって城兵は地面に転がるのが肩越しに了斎の視界に入る。

 その後、了斎たちは半刻もかけずして城を陥とすことに成功した。
 勝因は手はず通りに城にもぐりこみ、火つけで城内を混乱させたれんの働きにある。
 燃え上がる城を側に了斎は駆け寄ってくる人物を発見した。肩口には白い布が巻かれている、これは味方である証だ。混乱の巷で同士討ちをしないための工夫だった。
「無事だったか、おれん」
 了斎は満面の笑みで彼女を迎える。
 自分を厭っていようが、若い娘が命を落とすのはやるせない。その思いが合図を待つ間にさらに高まっていった、それがれんの五体満足な姿を目の当たりにしたことで歓喜となって吹き出たのだ。
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