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「したが、それで討ち取れるのは城主のみ。大軍ならともかく、小勢の場合、宰領と討ち取ってもさほど動揺は広がらぬ懸念がある」
「されども、城の兵全員を狙い撃つというわけにはいきません」
 れんの反論にアルメイダは眉をひそめて応じた。
 そんなやり取りを目の当たりにし、了斎はひとつ脳裏にひらめくものがある。というより、おもにれんを前にしているためだ。透波としては至極ありふれた手だった。
 しかし、透波から足を洗った彼にしてみれば提案するのが億劫だ。
 が、表情の変化を読み取ったのだろう、
「なにか思いつかれましたか」
 アルメイダがこちらに目を向けてたずねる。
「それは」
 了斎は言いよどんだ。
 しかし、ここで自分が告げずともすぐに透波であれば思いつく手。それに“務め”を果たさねば、尋常の切支丹にもどることもできない。
 気鬱を感じながらも了斎は口を開いた。

 夜明け前。空気が最も暑気をうすれさせるが、それでも不快に湿気がまとわりついてくる。
 それを自覚できるということは目を覚ましたということだ。
 より了斎を寝苦しくさせているのは悪夢のせいで見た寝汗だった。
 小さくため息をつき、アルメイダと次郎丸を起こさないよう留意しながら天幕の外へ出る。独りになりたい気分だった。
 それを邪魔するように天幕から少し離れた木立の近くには先客の姿がある。
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