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「ふむ、要らぬか」
「い、いる」
 要らぬか、などと聞かれれば、要る、と応じたくなるのが子どもというものだ、男児も反射的に首を横にふっていた。
「誰にもお前のことは告げない」
 アルメイダの口車に乗せられ、彼は自発的にそう告げている。
「されば、これをやろう」
 といくつかのこんぺいとうをアルメイダは男児へと渡した。
「食べてみよ」とうながされ、さっそく彼はそれを口にふくむ。次の瞬間、その双眸がおどろきに見開かれた。
「甘い、とほうもなく甘い」
 と感動の声をあげる。
 そんな彼に再度厳めしい声をつくって、
「よいな、約定を守るのだぞ」
 とアルメイダが告げると、男児は力強く何度もうなずいた。
 そのやり取りに毒気を抜かれたようすで、れんはそっと短刀を鞘におさめてしまう。
 やれやれ、と了斎はため息をもらした。ともかく、男児が無事で済んでよかった。
 転瞬、そのよろこびが吹き飛ぶ。
 人影が跳躍してすぐ近くへと降り立ったのだ。寄り添う形で金介も了斎たちからすこしはなれた場所に着地する。
 れんが厳しい顔となって誰何の声をあげようと口を開きかけるのがわかった。
 それを制するように八方から殺気が押し寄せる。
 ただし人の姿はない。木陰などにまぎれる形で距離を置いているのだろう。弓でこちらを狙うとこんな感じだと、了斎はかつての経験から状況を推測した。現状を把握しても有効な打開策は見出せず肌が粟立つ。
 せめて次郎丸と童だけでも――とっさに浮かんだのはその思いだ。
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