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「どうした」とたずねると、
「ロレンソ様はすごい仁です。アルメイダ様が『向後の策戦のために欠かせぬ仁』ともうされてはおりました、得心がいきました」
次郎丸は無邪気にロレンソのことを褒める。
ロレンソはそれに言葉を返すことができなかった。口もとにさびしさを思わせる笑みが浮かぶ。
結句のところ、実戦で通じる強さを手に入れる要諦は“人を殺めること”これに尽きるのだ。
乱世で名を上げた兵法者の多くが斬人の経験が豊かだ。
なにごとも実践ことが技倆を高める最短の道、それは忍び者の強さにもいえる。その業前は人に流させた腥い血の池の上に築き上げられるものだ。
さようなもの、誇るに値せぬ――。
ロレンソは苦い気持ちを飲み込むためにふたたび盃を空にする。
「ロレンソ、鹿之助殿が琵琶をご所望です」
いつの間にか彼らに交わって話をしていたアルメイダがロレンソのもとにやって来ていきなり告げた。
ロレンソは忍び者をしていたころは琵琶法師として各地をまわっていたものだ。その腕前は本職のものに負けずとも劣らずというものだった。
もっとも、切支丹となってからは琵琶からも遠ざかっていたが。
「彼は『実盛』という曲をご所望なのですが、弾けますか」
アルメイダが継いだ言葉にロレンソはほおを硬直させる。
「いかがしましたか」
敏感に変化を感じ取ったらしくアルメイダが怪訝な目をした。
「ロレンソ様はすごい仁です。アルメイダ様が『向後の策戦のために欠かせぬ仁』ともうされてはおりました、得心がいきました」
次郎丸は無邪気にロレンソのことを褒める。
ロレンソはそれに言葉を返すことができなかった。口もとにさびしさを思わせる笑みが浮かぶ。
結句のところ、実戦で通じる強さを手に入れる要諦は“人を殺めること”これに尽きるのだ。
乱世で名を上げた兵法者の多くが斬人の経験が豊かだ。
なにごとも実践ことが技倆を高める最短の道、それは忍び者の強さにもいえる。その業前は人に流させた腥い血の池の上に築き上げられるものだ。
さようなもの、誇るに値せぬ――。
ロレンソは苦い気持ちを飲み込むためにふたたび盃を空にする。
「ロレンソ、鹿之助殿が琵琶をご所望です」
いつの間にか彼らに交わって話をしていたアルメイダがロレンソのもとにやって来ていきなり告げた。
ロレンソは忍び者をしていたころは琵琶法師として各地をまわっていたものだ。その腕前は本職のものに負けずとも劣らずというものだった。
もっとも、切支丹となってからは琵琶からも遠ざかっていたが。
「彼は『実盛』という曲をご所望なのですが、弾けますか」
アルメイダが継いだ言葉にロレンソはほおを硬直させる。
「いかがしましたか」
敏感に変化を感じ取ったらしくアルメイダが怪訝な目をした。
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