忍び切支丹ロレンソ了斎――大友宗麟VS毛利元就(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 了斎が忍び込んだ城で敵に見つかり追いつめられた末に“自爆”して果てたと聞いたときには信じられない思いがし、次いで目の前が真っ暗になった。
 もはや、己があやつに“勝つ”ことは叶わぬのか――と。
 したが、あやつは生きておった――。
 腕に傷を負いながらも小七郎は笑いがこみあげそうになっている。
 小屋で着替えるときに手当てはしているが、薬草で痛みや熱をすべて消し去れるはずもなくいまだにその所在を傷口はうったえていた。
 しかし、それすらも了斎との再会の記念のごとく感じられるから不思議だ。
 白昼の京、かつての威容は失ってひさしいが小七郎の目にはその町並みが輝いて見える。最初に京にのぼったときは戦乱のせいで荒れたその姿に「この程度か」と思ったものだが。

    三

 襲撃者が去っても物々しい空気は消えてなかった。
 堂内にはアルメイダの指示で負傷者が運び込まれている。忍び者たちに手傷を負わされた人間だ。
 ここにいないからといって無事とは限らない。僧と鹿之助にしたがう士がひとり、忍び者の犠牲となっていた。しかし、彼らを悼んでいる暇はない。
「ロレンソ、この仁をおさえてください」
「承知しました」
 アルメイダの指示にしたがい、側にいる鹿之助の手下の者をおさえた。足を投げ出しうめき声をあげる姿はあわれだがこれからおこなう“処置”は暴れられると滞りが出てしまうからしかたがない
 身動きを封じられ不安げな顔をする若者の脇腹に、アルメイダが鎮西から持ってきた焼酎を瓢の栓を開けてふりかける。
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