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 闇のなかでは思った以上に人の眼というのは輝く、そこを目印に狙ったのだ。しかし、そんな芸当をするならまず待ち伏せしていないとできるものではない。
 つまり、裏切り者がいた――歯噛みしながらも吟は声を張り上げる。
「退くよ、馬二」「うん」
 さすがは忍び、馬二は葛藤は押し殺しおとなしく側に飛び下りてきた。
 吟は今も無傷だ。だが、胸が銃丸で撃ち抜かれたように痛む。なにより、仲間の死が小平次を苦しめるであろうことが心苦しかった。

● ● ●

 塀を小平次が飛び下りたところで、庫裏のほうから人影が風を巻いて移動してきた。その数みっつ、身なりこそ修験者、浪人者、行商人と違うがそれぞれが得物を手にしており、一夜の宿を求めた無害な者でないことを如実に物語っていた。
 同時に銃声がひびく。とっさに体を強張らせた。それは塀の上の吟も同じだ。
 お陰で飛び下りる機を逸する。間合いが詰まり過ぎたところで跳べば無防備な姿を敵にさらすことになり危険だ。塀の上で手裏剣を取り出し、吟は援護の体勢を取る。
 待ち伏せを受けたということは内通者がいる――大刀の柄を手に手を伸ばす小平次の胸に苦い思いがわいた。慣れない得物の感触が、父との絆を断たれたようで疼痛を胸に生じさせるがそれに浸っている暇はない。
 先頭のひとりが鎖打棒、鎖の両端に棒状の分銅がついた武器を電光の速度でふるった。風が唸り、影が走る。体を開いて躱そうとするが、敵が手もとの鎖を操作したとたん軌道を変えた分銅がななめに動いた。
 強引にかがんで避けた。瞬間、二番手の男が脇から手にした棒を間合いの外から一閃する。
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