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「承知した、小平次さん」だが、それを瀬兵衛がさえぎった。
「年寄様」「おまえは黙ってろ」
抗議とおどろきが半々の表情の若者を、瀬兵衛は厳しい顔で睨みつける。荒々しい海賊を率いる四人の島年寄のひとりであるたけにその貫禄は下手なやくざ者の親分では負けてしまいそうな迫力だった。さらに、
「こちらの仁の手並みは倅をまたたく間に取り戻してくださったことで承知済みだ、おまえの異見なんぞ聞いてねえんだよ」
と恫喝されては黙り込むしかない。
「平吉、おまえはひとっ走り行って、鐘を鳴らすように伝えてこい」
早く行け、と怒鳴られ若者は弾かれたように走り出す。
「助かります」
これでいいだろうか、という顔で自分を見る瀬兵衛に小平次は大きく顎を引いた。
五
一艘の小舟が夜の海を進んで行く。互いがぶつからないようにか、敵方は提灯の明かりが灯っているから目標を見つけるのは簡単だ。もちろん、派手に動く連中が陽動という可能性も鑑み、船上の馬二は他の方角にも時折視線を配っている。が、周囲の警戒はおもに同じ舟に乗っている太蔵が担当していた。
この稼業、うまくいくといいなあ――馬二は心から祈っている。
「年寄様」「おまえは黙ってろ」
抗議とおどろきが半々の表情の若者を、瀬兵衛は厳しい顔で睨みつける。荒々しい海賊を率いる四人の島年寄のひとりであるたけにその貫禄は下手なやくざ者の親分では負けてしまいそうな迫力だった。さらに、
「こちらの仁の手並みは倅をまたたく間に取り戻してくださったことで承知済みだ、おまえの異見なんぞ聞いてねえんだよ」
と恫喝されては黙り込むしかない。
「平吉、おまえはひとっ走り行って、鐘を鳴らすように伝えてこい」
早く行け、と怒鳴られ若者は弾かれたように走り出す。
「助かります」
これでいいだろうか、という顔で自分を見る瀬兵衛に小平次は大きく顎を引いた。
五
一艘の小舟が夜の海を進んで行く。互いがぶつからないようにか、敵方は提灯の明かりが灯っているから目標を見つけるのは簡単だ。もちろん、派手に動く連中が陽動という可能性も鑑み、船上の馬二は他の方角にも時折視線を配っている。が、周囲の警戒はおもに同じ舟に乗っている太蔵が担当していた。
この稼業、うまくいくといいなあ――馬二は心から祈っている。
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