笑う死霊家臣団 (別名義、別作品で時代小説新人賞最終選考落選歴あり)

チャプタ―２１６

チャプタ―２１６(終章１)

　一五〇〇ほどの兵がこれほどに数を減らしたのだ、撤退の壮絶さをなによりも壮絶に物語っていた。
　だが、それでも渠らは足を止めない。
「みなの者、もはやこの地に用はないッ。大阪で妻子をとりもどし、薩州へと帰るぞ！」
「応！」
　愛する甥を亡くした維新公が目を赤くして叫び、市右衛門たちは大声で応じた。

　――これらの市右衛門の活躍が、のちに“命知らずの薩摩隼人”として人々の記憶の残ったことは想像にかたくない。

　そして……

　　　終章

　関ヶ原の戦いから数年の時が過ぎた――。
　市右衛門の姿は島津家の外城にではなく、とある集落の近くにある畑にあった。
　その装(なり)も地下のものとなり手には鍬を握っている。
　侍として生きていたころは、どこかその表情に悲愴さを常ににじませていたが、今は晴れ晴れとした表情を浮かべていた。
　――関ヶ原の戦いののち、渠は島津家を辞したのだ。