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チャプタ―213

チャプター213

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 島津の軍兵の足取りが目に見えて鈍る。
 東軍の士卒の攻撃に拘束されて、思うように勧めないのだ。
「いかがいたしましょう?」
 維新公に口々に将兵が問うのが敵から奪った槍を振るう市右衛門の耳にも届く。
 心持ちはわからなくもない。
 なにしろ、きりがない……――のだ。
 が、維新公の頼もしい大音声もこたびは聞こえない。取り得る手などないのだ。
 だが、そうは思いたくない。ために、
「殿ッ」「殿!」「殿ォ!」
 と将兵たちの間から声がもれた。
 それを目の当たりにしていた維新公の重臣、長寿院盛淳が進み出る――それを、市右衛門は視野の端にとらえる。
「この期に及んで談合はいらぬッ。慮外ながら、合戦しようと思う衆はそれがしについて参れ!」
 長寿院は高い声で叫んだ。
 渠は、維新公から拝領した縫箔(ぬいはく)の羽織を着、治部少輔から贈られた団扇で周囲を煽って味方をまねく。
 ……一瞬、市右衛門は迷った。
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