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チャプタ―197

チャプタ―197

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 ――乱戦のなか、小早川勢に攻め立てられて背走する宇喜多隊の連中が島津陣に殺到する。
 すでに、維新公と豊久は分断されていた。
「島津の軍兵以外はもはや、敵だッ。近づく者は殺して構わぬ!」
 組頭のひとりが怒声でもって指示する。
 一度動き出した島津家の将兵は鬼と化す――敵味方の別なく、矢玉を猛然と浴びせかけ、刀槍を叩きつけた。
 これにはたまらず、宇喜多隊も進路を変えるしかない。
 が、かといって背後に戻るわけにもいかなかった。
 結果、島津陣の脇、池寺池に落ちて溺死する者が続出する……。

 いかがすべきか――維新公は思索にふけり、騒擾の音を遠くに聞く。だが、考える時間はほとんど残されていない。
 陣を丸くし、小高い丘にはせのぼって情況把握につとめていた。
 このままでは、島津の士卒のことごとくが無為に討ち死にすることとなるだろう。
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