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チャプタ―164

チャプタ―164

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「かような刻限に起こすとは何事か出来いたしましたか?」
「奇襲で、奇襲でござろうか!?」
 右京亮はさも億劫そうに、八九郎は妙な期待を抱いて興奮を露わに市右衛門の前に並び立った。
「――今宵、おことらに告げておきたいことがある」
 ひとつ深呼吸をし、市右衛門ははっきりとした声で切り出す。
 その横顔を、道明と平兵衛が側にたたずみ見守っていた。
「実は――」
 市右衛門は、一連の事実を右京亮と八九郎に訥々と話す。
「先刻承知、のこと」
「な……」
 話が終わった瞬間に右京亮が口にした台詞を耳にし、市右衛門は目を瞠った。
「物読み坊主に学文(学問)を共に習(なろ)うておった頃からの長い縁、若の胸のうちなどお見通しに決まっておる」
「それがしも透波でありますれば、人の心を読むのはいとも容易きこと」
 渠につづき、八九郎も苦笑を浮かべて言葉を継いだ。
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