笑う死霊家臣団 (別名義、別作品で時代小説新人賞最終選考落選歴あり)

チャプタ―１５６

チャプタ―１５６

　ふたつ目は、伏見入城が拒まれたことだ。情報の伝達に不備があったのか、城番の鳥居元忠(とりいもとただ)が拒絶したのだ――それも二度に渡って。そうしているうちに、治部少輔から西軍に与するよう要請があった。維新公にそれをむげに拒否することはできない。なにしろ、治部少輔は秀頼を背景にしている――それはまさに、維新公によっては“公儀”の命に等しい。
　そして、維新公と麾下の軍兵は伏見城を西軍に加わって落城させ、伊勢、美濃、北国の三方面にわかれて進軍を始めた。
　島津勢は治部少輔の手に属して美濃に向かった。

　その途上、草原で渠らは休息を取っている。
　それぞれが休む、あるいは遊興に興じるなどしていた――後者は、鷹狩り、相撲、博打といったものだ。
　みながみな、甲冑は脱いでいる。重い甲冑を常にまとっていては行軍などできるはずもない。また行軍中も、お国入りや出陣のときを除いて隊列など組んで動いていなかったことが「甲子夜話(かしやわ)」に記されている。
　そんななか、変わった者たちの姿がある。