笑う死霊家臣団 (別名義、別作品で時代小説新人賞最終選考落選歴あり)

チャプタ―７２

チャプタ―７２

ある日、見るに見かねてついに市右衛門は渠らに苦言を呈する。
　が、面映そうにしながらも、平兵衛たちは「慎む」とは口にしなかった。
「何しろ、若。魂はともかく肉体が若いゆえ、火照ってたまらぬのでござる！」
　鼻息荒く――市右衛門にとっては相変わらず老爺の姿が網膜に焼きついたままの人物に言われると、げんなりしてしまう。
　性のことを正面切って訴えるでない……――。
「性欲はこうも面倒なものとは忘れておりました」
　右京亮は億劫そうに、
「いやぁ、人が殺せるだけでなく女まで抱けるとはそれがしは果報者でありまする！」
　八九郎に至ってはみじんも悪びれずに言葉を返されてしまっては、市右衛門としてはぐうの音も出ない……。
　揃いも揃って……ここは猿山か――。
　最後に、
「すみませぬ、若――それがしは抑えようといたしたのでございまするが、その……それでも湧き上がるものがあり」
　などとまじめな清次郎に、頬を赤く染めて言い訳される至っては「もう、止めるのは無理だ」と諦めるしかなかった。
　こやつらは、もう……――。