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チャプタ―66
チャプタ―66
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そうして待っているうち、四半刻も経たずに水の流れの音に、人の声、甲冑の擦れる騒音などが混じった。そして、意気軒昂な顔つきで伊東の士卒が林から姿を現す。
――二度目の遭遇も反応は似たようなものだった。まさか、待ち受けていようとは、そんな唖然とした顔つきになり一瞬固まる。
その様子を、今度は市右衛門は島津の軍兵の最前列で見つめていた。川でもたついたせいで、自然とこの位置に組み込まれることになったのだ。
市右衛門一同の手には槍がそれぞれ握られている。長柄ではなく、格闘用の素槍だった――市右衛門が手にしているのは、八九郎があらかじめ朋輩が槍を失うことを見越して討ち死にした侍から拝借しておいたものだ。――まず、常に意気軒昂な平兵衛が飛び出す。
「続け、右京亮!」「承知……」
横着者の右京亮は、平兵衛の下知に逆らうのが“面倒”で死地へと突入していった。
銀光が二つ、閃く――平兵衛の穂先が敵の兵の喉を貫通し、右京亮の槍がもう一人の足を割いた。前者は瞬殺、後者も命こそ絶たれていないが戦闘不能に陥ったことには違いはない。
閃、閃、閃と立てつづけに穂先が宙を走った。その度に血煙が吹いて、伊東勢の者が命を奪われ、または深手を追う――。さらに、そこに島津の士卒が猛然と加わった。ここで敵の数を減らさなければ結局のところ、己が後で殺される羽目に陥るかもしれない、そんな思いもあっての行動だ。一挙に伊東勢の十数人が命を絶たれる。……この段になって、やっと敵方は我に返った。
「敵だッ、敵がおるぞー!」一人が叫ぶと、一気に伊東の士卒が殺気立つ。
――二度目の遭遇も反応は似たようなものだった。まさか、待ち受けていようとは、そんな唖然とした顔つきになり一瞬固まる。
その様子を、今度は市右衛門は島津の軍兵の最前列で見つめていた。川でもたついたせいで、自然とこの位置に組み込まれることになったのだ。
市右衛門一同の手には槍がそれぞれ握られている。長柄ではなく、格闘用の素槍だった――市右衛門が手にしているのは、八九郎があらかじめ朋輩が槍を失うことを見越して討ち死にした侍から拝借しておいたものだ。――まず、常に意気軒昂な平兵衛が飛び出す。
「続け、右京亮!」「承知……」
横着者の右京亮は、平兵衛の下知に逆らうのが“面倒”で死地へと突入していった。
銀光が二つ、閃く――平兵衛の穂先が敵の兵の喉を貫通し、右京亮の槍がもう一人の足を割いた。前者は瞬殺、後者も命こそ絶たれていないが戦闘不能に陥ったことには違いはない。
閃、閃、閃と立てつづけに穂先が宙を走った。その度に血煙が吹いて、伊東勢の者が命を奪われ、または深手を追う――。さらに、そこに島津の士卒が猛然と加わった。ここで敵の数を減らさなければ結局のところ、己が後で殺される羽目に陥るかもしれない、そんな思いもあっての行動だ。一挙に伊東勢の十数人が命を絶たれる。……この段になって、やっと敵方は我に返った。
「敵だッ、敵がおるぞー!」一人が叫ぶと、一気に伊東の士卒が殺気立つ。
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