笑う死霊家臣団 (別名義、別作品で時代小説新人賞最終選考落選歴あり)

チャプタ―６１

チャプタ―６１

「益体もないことを申しますな、若。人は一度は必ず死ぬものですぞ！」
　地面に立てていた槍を手によるや、押し寄せる敵を銀光を何度も閃かせ骸へと変えた。
　――渠だけでなく他の家臣たちも、
「ひゃははは、ひゃははは、死ね、死ね、死ねェェェェェェ！」
「近寄るでない、それがしは血を厭うておるのだ……」
「あぁ、面倒でござる」
　一騎当千の働きを見せていた。周囲に累々と死体が積み重なる。
　まったくもって、変わり者ばかりだ、それがしの家臣は――市右衛門の頭の片隅の冷静な部分がぼやきを漏らす。
「おことは“二度目”だからよいのかもしれぬが、それがしはそうはいかぬのだ！」
「懸念には及びませぬ。きっと、若も“甦り”ましょう」
「周囲に目を向けぬかッ、おことのように“甦って”いる者がおるか？」
　むちゃくちゃなことを言う平兵衛を、市右衛門は悲鳴に近い声で叱った。
「……そういえば、そうでございますな。これは失敗(しくじ)りましたな、はっはっはっ」
　致命的な事実を指摘され、それを受け入れても渠は平然としたもので、腕を電光と化させ刃唸りを生じさせながらも快活に笑う。
「――……」
　これでには市右衛門も言葉を失うしかなかった。
　そうしている間にも、家臣たちは猛然と戦い首級を挙げていく。