笑う死霊家臣団 (別名義、別作品で時代小説新人賞最終選考落選歴あり)

チャプタ―４８

チャプタ―４８

「若年にしてなかなかの業前……」
「末恐ろしい」
　家臣たちがざわめいた。が、
「静かにせぬか」
　肝属兼盛の一喝でぴたりと静まる。これなら、戦場の統率もよく取れるはずだ。
　向後の島津の戦での活躍を、市右衛門は垣間見た思いがする。だが、それよりも右京亮だ。
　彼はこちらに戻ってくると照れ笑いのような顔をして、
「一度死ぬと、生死などどうでもようなり、剣の業が冴えますな」
　などと述べた。
　それで得心がいく。
　剣術の極意の一端は、“己が命を顧みないこと”にあるといっていい。
　それを、一度死んだことで右京亮は体得したのだ。

　そんな境地を獲得したのは、彼だけでなかったらしく八九郎、平兵衛も以前よりも冴えた腕前を立ち合いで披露してみせた。

　そして、ついに市右衛門の出番が来てしまう……。