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チャプタ―33
チャプタ―33
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「御屋形様に陣借りしたく、罷り越した次第でござる」
と平兵衛がはっきりとした口調で告げる。さすがは年の功だ。
「餓鬼が雁首揃えてか? 合戦遊びは近場でやるものだぞ」
侍の背後の足軽が嘲笑を浴びせてくる。
「ははは、違いねぇ」
「それよりお前ら、俺に“春”を売らねえか?」
「勘助の衆道好みには困ったもんだ」
城郭を守る連中から下卑た笑いが起きた――。
まったく、気分の悪くなる連中だ。
主の度量も、これでは知れたものだろう。
だが、とにかく、ここは穏便に事を済ませて――と市右衛門が考えていたところ、
「なにを異なことを申しておる? 我らは島津に陣借りするのであろう?」
人の話をまったく聞いていなかったのか、道明がとんでもない一言を放った……。
途端、その場の空気が凍りつき、か細い蚊の羽音さえ皆の耳に届きそうな静寂が広がる。
ひとつ、ふたつ、みっつ、と時が過ぎる――刹那、
「いやぁ、なにを申しておられる」
清次郎が後ろをふり向いて愛想笑いを浮かべた。
「我らが猪武者の島津になど合力するはずがないでは――」
「だが、確かに『島津家に陣借りする』と申していたではないか」
己がどれだけ危うい発言をしているか理解していないのか、必死に言いつくろう清次郎の言葉を道明は情け容赦なく台なしにする。
と平兵衛がはっきりとした口調で告げる。さすがは年の功だ。
「餓鬼が雁首揃えてか? 合戦遊びは近場でやるものだぞ」
侍の背後の足軽が嘲笑を浴びせてくる。
「ははは、違いねぇ」
「それよりお前ら、俺に“春”を売らねえか?」
「勘助の衆道好みには困ったもんだ」
城郭を守る連中から下卑た笑いが起きた――。
まったく、気分の悪くなる連中だ。
主の度量も、これでは知れたものだろう。
だが、とにかく、ここは穏便に事を済ませて――と市右衛門が考えていたところ、
「なにを異なことを申しておる? 我らは島津に陣借りするのであろう?」
人の話をまったく聞いていなかったのか、道明がとんでもない一言を放った……。
途端、その場の空気が凍りつき、か細い蚊の羽音さえ皆の耳に届きそうな静寂が広がる。
ひとつ、ふたつ、みっつ、と時が過ぎる――刹那、
「いやぁ、なにを申しておられる」
清次郎が後ろをふり向いて愛想笑いを浮かべた。
「我らが猪武者の島津になど合力するはずがないでは――」
「だが、確かに『島津家に陣借りする』と申していたではないか」
己がどれだけ危うい発言をしているか理解していないのか、必死に言いつくろう清次郎の言葉を道明は情け容赦なく台なしにする。
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