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チャプタ―31
チャプタ―31
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「できぬとは言わせぬ。貴様は侍であろう!」
「さ、侍だからといって――」
横暴な陰陽師に異を唱えようとした瞬間、「若!」と大声で平兵衛が話に割って入る。
「責任は取らなければなりませぬッ。しかと、お引き受けした!」
前半をこちらに、後半を陰陽師に向けて渠は告げた。
簡単に主のことは忘れるくせにこういうときだけ律儀な平兵衛に対し、市右衛門はとほうもない疲労感をおぼえる……。
しかし、今までこの活力の有り余った家臣を言い負かしたことは一度もない。
理屈がどうのこうの以前に、その“圧”――勢いに圧(お)されて相手の言葉を呑んでしまうのが市右衛門の常だった。
「なーに、島津の家の戦に陣借りし、戦功をもって家臣に加われば一〇〇〇人などあっという間!」
こちらの返答を待たずに盛り上がる平兵衛を前に、市右衛門は泣きたいような気分になった。
そんな渠を、
「若、諦めが肝要でござりますれば」
と諦念の表情の清次郎が、静かに慰める――。
「さ、侍だからといって――」
横暴な陰陽師に異を唱えようとした瞬間、「若!」と大声で平兵衛が話に割って入る。
「責任は取らなければなりませぬッ。しかと、お引き受けした!」
前半をこちらに、後半を陰陽師に向けて渠は告げた。
簡単に主のことは忘れるくせにこういうときだけ律儀な平兵衛に対し、市右衛門はとほうもない疲労感をおぼえる……。
しかし、今までこの活力の有り余った家臣を言い負かしたことは一度もない。
理屈がどうのこうの以前に、その“圧”――勢いに圧(お)されて相手の言葉を呑んでしまうのが市右衛門の常だった。
「なーに、島津の家の戦に陣借りし、戦功をもって家臣に加われば一〇〇〇人などあっという間!」
こちらの返答を待たずに盛り上がる平兵衛を前に、市右衛門は泣きたいような気分になった。
そんな渠を、
「若、諦めが肝要でござりますれば」
と諦念の表情の清次郎が、静かに慰める――。
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