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チャプタ―24

チャプタ―24

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 いつの間にか姿勢を改めた、右京亮の仕業だ。
 渠は手に取った肉をすばやく口に放り込む。
「うむ、美味い。それにしても、死んでおっても腹が減るとは異なことでございますなぁ」
「これ、右京亮ッ。若より先に手をつける奴があるか!」
「これはすみませぬ、ご家老。つい――」
「ついではないわ、この慮外者め!」
 生前と変わらぬやり取りを右京亮と平兵衛は交わす。
「――若、食欲が湧きませぬか?」
 そんな二人をよそに、気が回る清次郎が声をかけてきた。
 市右衛門は無言で首を縦にふる。
「しかし、若。偆道氏(うじ)も、人の身体を借りて仮初めにも生きておればこそ、ああして猪を食せるのです。生きのびた者の務めとして、食べねばならぬとそれがしには思えるのでござる」
 押しつける口調ではなく、あくまで己の意見を主張する声音で清次郎は言葉を重ねた。
「今日を生き、明日、なにかを為すためには腹を満たさねばなりませぬ」
「そうだな……」
 いつの間にか口論を止めていた平兵衛と右京亮、さらには八九郎も見守る市右衛門は小刀を受け取って肉をこそげ落とす。
 そして、それを口に運んだ。
 味付けなどなにもない状態だ、正直癖があってそう美味しいものではない。
 それでも、舌の上に広がった肉と脂の“旨み”は口の中に唾液を溢れさせ、胃が身じろぎをするには充分なものだった。
 生きている――ふいにそんな思いが湧きあがってくる。
 その感動を込めて、
「美味い」
 平兵衛に一言告げた。
「それは、ようござった」
 渠は小さく顎を引いて笑みを浮かべる――。
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