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チャプタ―21

チャプタ―21

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   四

 夕刻――。
 戦にでも巻き込まれたのか灰村となった集落の一角、辛うじて無事な民家に市右衛門の姿はあった。
 遮る物の無くなった戸口からは、外では空き地となった場所で平兵衛が仕留めてきた猪を豪快に丸焼きにしている。
「若ぁ、ご覧あれぇ。美味そうでござるなー!」
 心まで童心に返ったように嬉しげな顔をこちらに向けて声をあげた。
 曖昧にそれに応え、市右衛門は渠から目を逸らしてため息を漏らす。
「――なんというか、申し訳ありませぬ、若」
 そんな渠に、近くに腰を下ろしていた清次郎が謝罪の言葉を口にした。
「……謝ることはない。おぬしたちが、どういう形であれ戻ってきたことは嬉しく思う」
 こちらの言葉に、渠は逆八の字にしていた眉を開く。
「おぬしの仕込んでくれた剣術のお陰で命拾いした」
「若の刀術の天稟は、並外れております。拙者のしたことなど成長の手助けに過ぎませぬ」
 謙遜を口にしながらも、清次郎は淡い笑みを口もとに漂わせた。
「若も戸惑っておりましょうが、手前らも面食らいましたぞ」
 そこに、清次郎の向こうに寝転がっている右京亮が話に割り込んだ。
 ……一度死に、霊魂となって他人に憑依したとはいえ、元の主の子息に対して何とも不敬な態度だった。
 こういう性根の者だと理解しているから市右衛門も腹は立てない。が、やはり呆れを感じるなというのは無理がある。
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